「その6」100%情報漏洩を防ぐ方法は存在しない

昨今では、情報漏洩が報道されることが多い。そして、経営者としては、情報システム部門に漏洩を防げ!と命令する。USBメモリで情報持ち出しが問題になれば、USBメモリの使用を禁止するという本質的ではない、まったく意味の無い対応をすることも少なくない。

コールセンターはNTTマーケティングアクトProCX(プロクス、大阪市)が企業や自治体から請け負い、サーバー管理を担うNTTビジネスソリューションズ(大阪市)の元派遣社員がUSBメモリーを使って持ち出した

NTT西日本系、顧客情報流出は928万件 顧客は69団体 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

国立病院機構茨城東病院(茨城県東海村)は22日、院内で患者延べ6138人の個人情報が入ったUSBメモリーを紛失したと発表した。この日までに第三者への流出や不正利用は確認されていないという。

茨城東病院、患者の個人情報入ったUSBメモリー紛失 (msn.com)

などなど。

USBメモリの利用制限が本質的な解決方法にならない理由は”情報漏洩”の定義にあり

確かにUSBメモリは情報の持ち出しに便利なデバイス。大量のデータを持ち出すのも簡単。では、USBメモリでないと情報は持ちだせないのか?といえば、そんなことはない。画面に表示されたデータをスマホで撮影したり、紙に手書きしても、そのスマホや紙を紛失すれば漏洩の可能性がある。

漏洩したデータが1件であっても、USBメモリを使って大量でも、漏洩は漏洩。少量のデータだから漏洩にならないということにはならない。では、紙の利用は制限するか?といったら、漏洩したから紙の利用を制限したなんて話はきかない。

いずれも内部監査において、お客さま情報が記載されている書類の紛失が判明しました。
紛失した経緯は明らかになっておりませんが、個人情報管理態勢および文書管理が厳正に行われていないことから、紛失するリスクがありました。

お客さま情報が記載された書類の紛失について (shimanami-shinkin.jp)

このしまなみ信用金庫の書類紛失事件でも、その後、書類の使用は禁止していない(当然だけれども)。

適切な情報漏洩防止対策はシンプル

再発防止策は、以下の通り。

当金庫は、今回の事態を重く受け止め、全職員に対し、個人情報管理および文書管理に関する周知・教育を改めて実施いたします。

お客さま情報が記載された書類の紛失について (shimanami-shinkin.jp)

このケースに限らず、情報漏洩経路が、書類なのかUSBメモリなのかは、実はどうでもよくて、上記の例のように、再発防止は、「個人情報管理および〇〇管理に関する周知・教育」なのだ。〇〇には、書類やUSBメモリ以外に、オンラインストレージなども該当する。

「その5」昨今(2023/12/26)のウイルス事情とウイルスの歴史

「その4」コンピューターウイルスと一般的なウイルスの根本的な違い – Yuma Shimakawa Blog

の続き。超短縮版ウイルスの歴史。

前回、大昔のウイルスは愉快犯が多かった、その後、金銭目的になったと述べた。

不特定多数攻撃から特定攻撃への変化

ネットを介するので、ウイルスは拡散しやすいという特徴があるので、不特定多数を攻撃するのに優れているのは間違いないのだが、不特定多数攻撃は、あまり流行らなかった。というのも、アンチウイルスソフトでの新ウイルス対策スピードも同時に進化したので、ウイルスの発見も早いし、対策も早かった。結果、あまり金にならなかったと思われる。

不特定多数がダメなら、特定の企業への攻撃。いわゆる標的型攻撃というやつが、現在では、現在では主流となっている。

「その4」コンピューターウイルスと一般的なウイルスの根本的な違い

コンピューターウイルスは自然発生しない

人や動物が感染するウイルスは基本的には自然発生している(倫理的に許されない細菌兵器のようなウイルスも存在するのだろうが)。しかし、コンピューターウイルスは自然発生しない。ウイルスは、クラッカーなど呼ばれるプログラマー、つまり人が作っている。

なぜ人はウイルスを作るのか?

ひとことで言えば、「金」

初期のウイルス作者のほとんどは愉快犯、拡散されるのを楽しんでいた。が、それは今は昔。現在では、100%金銭目的。

どこからでも攻撃できるので、足は付きにくいし、成功率は低くても下手な鉄砲ライクに大量攻撃することで、リターンも期待できる。つまりは、ローリスク・ハイリターンな金目当てでウイルスを作り攻撃する。

[小話]銀行のキャッシュカードは多要素認証で安全という話

たかが4桁の暗証番号、高いセキュリティが求められる今日において、数十年変わらない、銀行のキャッシュカードの認証。安全性に疑問をもつの当然。

なのだけど、実際は、銀行のキャッシュカードの仕組みは、現在でいえば、「多要素認証」。安全性は高い。

なぜ多要素認証といえるのか?

多要素認証の説明はココでは省くとして、銀行のキャッシュカードにおける要素は何なのか?

ひとつめの要素は4桁の暗証番号

暗証番号が認証情報であるというのは、だれもが納得するはず。

ふたつめの要素は、キャッシュカード自体

ATMなんかでキャッシュカードを挿入する作業自体が要素のひとつ。というのも、キャッシュカードは、口座所有者がだけが所持しているので、所持しているだけで認証していることになる。

ウラを返せば紛失したら、すぐに、銀行にその旨を伝えるべき。紛失したかどうか微妙な状況であったとしても、手元にない不安があるのであれば、それは銀行に伝えたほうがよい。紛失したということは、他人がキャッシュカード所持という要素を使える可能性がでてきてしまうから。

オンラインバンキングで口座番号と暗証番号だけでログインできない理由

ここまで理解できれば、オンラインバンキングでは、口座番号と認証番号だけではログインできないのも理解できるはず。この2つの情報だと、(ちょっと専門的になるが)知識情報だけでの認証なので、多要素認証ではなく、安全性が低くなるからだ。

「その3」ウイルス対策とアンチウイルスソフトの闇

セキュリティ強化の最初の一歩と勘違いされているウイルス対策

セキュリティ対策といえば真っ先に思いつくと思われるのが、アンチウイルスソフトの導入。確かに、アンチウイルスソフトは、目的が明確であり、効果も期待できそうなので、真っ先に思いつくはず。

アンチウイルスソフトの導入は必要か?

WindowsにはMicrosoft Defender、MacOSにはXProtect、最低限のウイルス対策ソフトが、現在のOSには標準装備。アンチウイルスソフト専業メーカーからすれば、検知率が低いなど、専用ソフトを推奨するが(当たり前)、ウイルス検知についてては、正直五十歩百歩。つまりは導入不要。

というよりも、ウイルス検知にいたっては、古いウイルスの検知率は、何を使っても検知できるが、最新のウイルス、例えば、過去3ヶ月に登場したウイルスの検知率は軒並み高く無いはず(根拠になる最近データはない)。

「その2」セキュリティってなに?定義の定義は重要なのだけど、一旦、忘れてウイルス対策

「うちの会社はセキュリティは重要ではないんですよ!」なんていう人はいない。が、その「セキュリティ」曖昧な言葉なので、まずはセキュリティはなんぞや?!ということを理解しなければならないのだけれど、これが以外と複雑なので一旦わすれて、最初に思いつくウイルス対策について。

コンピューターウイルスは自然発生しない

一般的にウイルスといえば、古くは天然痘、ちょっと前ならエイズ、毎年新種が出現するのがインフルエンザ。一般的にウイルスといえば、こんなのを指す。これらウイルス自然発生するのだが、コンピュータウィルスはしない。この点重要。コンピューターウイルスは、誰かが意図的に作成している、つまりは、攻撃者が存在していることを理解する。

攻撃者の目的はなにか?

大昔のコンピューターウイルスは、目立ちたかったり、他人のコンピュータ麻痺させて喜んだり、愉快犯も少なくなかったが、現在は、ほぼ金目当ての犯罪。

というのも、攻撃するコストは異様低く、かつ、攻撃成功のあかつきには、対価もでかい。世界中どこからでも攻撃できるので、捕まるリスクも少ない。ローリスクハイリターンなのがウイルスによる攻撃ということになる。

「その1」エライ人に「社内のセキュリティを強化しろ!」と言われたら

最初に実施することは、そのエラい人が、社内のセキュリティリテラシー(知識)基準になる必要があるというのを説明すること。

セキュリティ強化したいなら、まず、自らの強化が必要なのを理解してもらうこと。

会社の防災は総務だけの仕事ではない、同様にセキュリティもIT部門だけの仕事ではない

防災の日に避難訓練する企業は少なくない。その避難訓練、企画するのは総務部の仕事だが、実際に訓練するのは、(基本的に)社員全員。非常時の経路の確認(理解)や場合によっては消火器の使い方等も学ぶ。

ITセキュリティも同様。セキュリティ強化の責任は、IT部門にあるが、セキュリテイ知識の習得や理解は、エライ人も含め社員全員が理解しなければならない。

「ITは難しくてわからないんだよ」とか言っている場合ではない。

漏洩している形跡がなければパスワードの変更は不要

終わりなきパスワードとの闘い、「定期的な変更は不要」という新常識 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

良記事。

一部、引用しておく。

 1つのサービス内であっても定期的なパスワードの変更を求められることも多い。だが、これについては現時点で既に、複雑なパスワードを利用していれば定期的に変更しなくてもよいとする指針が整備されている。米国の国立標準技術研究所(NIST)が2020年3月に発行した認証に関するガイドラインでは、パスワードの定期変更について「定期的に変更するよう要求すべきではない」としている。

 さらにこのガイドラインの改訂版のドラフトが、2022年12月に公開された。改訂版では「ユーザーの要求や認証システムへのマルウエアなどが侵入した証拠がない限り、パスワードの定期的な変更を要求しないこと」としている。以前のガイドラインで「要求すべきではない」としていたパスワードの定期変更が、改訂版ドラフトでは「要求しない」に強まった。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/091101366/

いわれてみれば、そりゃそうだ。って話。定期的な変更を強要することで、使い回しのリスクは高まる、その通り。

セキュリティ周りの常識は常に変化することを頭にいれておくこと。